劇場通い、ときどき読書

〜ミュージカルとライブと本と〜

ミュージカル「アリージャンス〜忠誠〜」

ミュージカル「アリージャンス〜忠誠〜」

東京国際フォーラム ホールC

・2021年3月20日(土)ソワレ おけぴ+セディナ合同観劇会

f:id:dietteryoko:20210321120409p:image

【ストーリー】

2001年12月7日、80歳の退役軍人サム・キムラのもとに一人の女性が訪ねてきた。

遺言執行人と名乗る彼女は、サムの姉ケイが亡くなり、サムに封筒を遺したことを告げる。
50年間会うことのなかった姉、そして過去の記憶が蘇るー。
日系アメリカ人のキムラ家は、カリフォルニア州サリナスで平和に暮らしていた。

1941年12月7日に真珠湾攻撃が勃発、米国の宣戦布告により第二次世界大戦に突入し、日本の血をひく日系アメリカ人たちは敵性外国人扱いをされてしまう。
翌年8月にキムラ家は自宅から強制的に追い出され、収容所へと移送される。
日系の人々は厳しい収容所生活を送りながら日本人の精神にも通じる耐え忍ぶ“我慢”に想いを重ね希望を失わずに暮らしていた。
一方、ワシントンDCではマイク・マサオカが日系人の社会的地位向上のためアメリカ軍との交渉に当たっていた。

ある日、収容所でアメリカへの忠誠を問う忠誠登録質問票(Loyalty Questionnaire)が配られる。
一体どう答えるべきなのか、家族それぞれの考え方の違いが露わになる。
タツオは不当な強制収容に抵抗し、「No」を貫く。
姉のケイは収容所で出会ったフランキー・スズキと共に強制収容と徴兵の不当性を訴え、日系人の人権を求める運動に参加する。
弟のサミーは家族の反対を跳ね除けて、アメリカへの忠誠を示そうと軍に志願。
恋仲になった看護婦のハナ・キャンベルに家族を託し、日系人で構成された第442部隊の一員として戦場へと赴く。
己の信じる忠誠を胸に、戦時下を生き抜こうとした家族。その行く末はー

ミュージカル「アリージャンス〜忠誠〜」公式HPより引用)

 

2012年にサンディエゴで初演、2015年にはブロードウェイで上演され、今回2021年、ついに日本初演となった作品。

第二次世界大戦アメリカで、12万人以上もの日系アメリカ人の強制収容をミュージカルにした作品だと、演出のスタフォード・アリマさんが公演プログラムの中で語っています。

戦争モノがキライ、重い話は苦手…なのに、このミュージカルを観ようと思ったのは、メインキャストの方々のお名前をみて。

濱田めぐみさん、海宝直人さん、中河内雅貴さん、小南満佑子さん、今井朋彦さん、渡辺徹さん…と、私がこれまでに、まだ一度も生の舞台作品で拝見したことがないけれど、絶対観たい!とずっと思っている役者の方々ばかり!(上條恒彦さんは、2019年の「ラ・マンチャの男」で拝見したことアリ)

私は、戦争を題材にした作品に触れると、戦争に対する憎悪の念が心の底から湧き上がってきてしまい、「みんな!争いはやめて、仲良く暮らしていこうよ!」っていう平和主義者的な思考が頭の中を支配するのです。

そして、さらに家族が題材だと、ほんとに苦しいというか、それぞれの人物の、お互いを思いやる情のようなものが伝わってきてしまって、心が痛くなります。

この作品は、まさにそのド真ん中をいく作品で、感情的には辛かった・・・。

 

とは言うものの、このミュージカル、観劇できて本当に良かったです!

戦争中の日系アメリカ人の方たちが、こんな不当な扱いを受けていたこと、恥ずかしながら全然知りませんでした。日系一世の世代と、日系二世の世代との意見や考え方の違い、それぞれの辿ってきた経緯を考えれば、それは当然のことだと思いました。家族なのに、戦争のせいで意見相違の立場になってしまい、それこそ一生会えない状態になってしまうなんて、本当に戦争が憎い。実話だからこそ、悲しくてやるせなくて、彼らがかわいそうでとても辛かった。

…なんですけど、彼らの逞しさに救われました。ひどい困難な状況に自分たちが置かれていても、前向きに力強く生きていくチカラ。それは、戦況下でなくとも、現在の状況にも通じるものがあって。人間の底力とか、明るさとか、そんなことに救われる思いがしました。

 

そして、もう最高に素晴らしかったのが、キャストの方々の歌唱!!!濱田めぐみさん、海宝直人さんをはじめとして、出演者の方全員の、歌がほんっっとに素晴らしくうますぎて!!コーラスの厚みもすごくあって、少ない人数ながら、素晴らしいハーモニー!

これだけでも、このミュージカル観て本当に良かった!と思いました。

 

この日、一幕の途中で、地震が発生しました。

舞台上では今井朋彦さんの熱演が続いていて、地震には気づかれていない様子。揺れが大きくなってきて、劇場の天井装置や舞台装置が音を立て始めたので、客席は少しだけザワっとし始めて…舞台上では、スタッフの方が演技中断を告げに来ました。(今井さんはそこではじめて事態に気づかれた様子でした。)

客電がついて、そこから、地震のため上演を中断するという場内アナウンス。揺れがおさまってからは、舞台機構の確認のため、しばらくお待ち下さいとの続報が。その間、客席は騒いだりする様子も一切なく、静かに冷静に待機。中断から20分くらい経過したところで、上演再開のアナウンスが。そして再び客電が消えて、中断したシーンの少し前から上演再開!

そこからは、余震もなく、無事に最後まで上演ができました。

観劇中に地震に遭遇したのは初めてでしたが、キャストのみなさんの凄まじい集中力、そして劇場スタッフの方々の危機管理能力の素晴らしさを目の当たりにしました。それから、自画自賛っぽいけれど、客席もみんなとても冷静で落ち着いていて、誰一人騒ぐこともなく、本当に素晴らしいな〜って思いました。

この経験から、やっぱり劇場空間っていうのは、そこに集うそれぞれのピースが、全部揃ってはじめて完成する、素晴らしいところなんだな〜って、改めて実感しました。

一体感!劇場ってほんと最高!

 

このミュージカル「アリージャンス」は、最後のカーテンコールの一部で撮影OKのコーナーがありました!

f:id:dietteryoko:20210321221335j:image

3階席だから、舞台が遠いーーーーー笑

オーケストラの方々も舞台の後方にいらっしゃいました♪(上演中はセットの後ろに隠れていました)

 

アメリカで作られた、戦争中の日系アメリカ人を描いたこのミュージカル作品。それが日本で上演されたこと、本当にいろいろなご苦労があったことが、パンフレットを読んでわかりました。コロナ禍ということもあって、その大変さは想像以上のものだったのではないかと思います。それでもこの作品を届けようとしてくださったこと、その思いをしっかりと受け止めて、じっくり反芻しています。

・・・「忠誠」って、なんだろうなぁ?・・・

観る価値のある、素晴らしいミュージカルでした。

最後は感動で、涙が溢れて止まりませんでした。

日本で上演してくれて、本当にありがとうございました!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ミュージカル「アリージャンス〜忠誠〜」

2021年3月12日ー3月28日 @東京国際フォーラムホールC

2021年4月17日ー4月18日    @愛知県芸術劇場大ホール

2021年4月23日ー4月25日 @梅田芸術劇場メインホール

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜