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ミュージカル「メリリー・ウィー・ロール・アロング」

ブロードウェイミュージカル「メリリー・ウィー・ロール・アロング〜あの頃の僕たち〜」

新国立劇場 中劇場

・2021年5月17日(月)ソワレ 初日

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【ストーリー】

ブロードウェイのバックステージを舞台に、人生を『逆再生』で描く全く新しいミュージカル!

フランク(平方元基)は、ブロードウェイの名もなき作曲家からハリウッドのプロデューサーへと転身し、大成功をおさめる。
多忙を極める彼には、下済み時代に親しかったチャーリー(ウエンツ瑛士)やメアリー(笹本玲奈)と会う時間もなくなってしまう。
波乱万丈な人生を送り、名声、富、成功を手にしたが、大切なものをどこかに捨ててきてしまったことに気づく…。

フランクは、人生の岐路を振り返り、思い出したのは20年前。
それは3人が出会い、決意したあの瞬間だった…。

夢を追い求めたことのあるすべての人に贈る。(ミュージカル「メリリー・ウィー・ロール・アロング」公式HPより引用)

開幕できるかどうか直前までわからなかったこの状況の中で、多くの人の祈りが届き、無事に初日を迎えたミュージカル、メリリー・ウィー・ロール・アロングを観劇してきました。

 

「メリリー・ウィー・ロール・アロング」は、作曲家スティーブン・ソンドハイム氏が、1981年にブロードウェイで最初に発表した作品。そこから、脚本家のジョージ・ファースとともに改訂を経て復活し、再演を重ね、ブロードウェイだけでなく、イギリスでも上演されるように。1992年のイギリス公演でメアリー役を演じた女優、マリア・フリードマンが、2012年のロンドン公演で、演出家としてデビュー。

今回の2021年版日本公演では、そのマリア・フリードマンが、イギリスからリモートで演出を、ティム・ジャクソンが、同じくイギリスからリモートで振付を手掛けました。

日本では2013年に宮本亜門さんの演出で上演された作品でもあります。(なぜかパンフレットには、そのことについてほとんど触れられていないのですが…)

www.gingeki.jp

 

逆再生ミュージカル、という通常の物語の進行の概念とは違う、冒頭から最後へ、時計を逆回しして物語が進んでいくという描き方をしたミュージカル。

ストーリーの結末から遡っていくので、観ているとシーンが変わるごとに、どんどん登場人物たちが若返っていくのです🌀
これは思ったよりもかなり頭を使います!
探偵モノの映画なんかで、最後にタネ明かしをするところがありますが、あの部分だけをテープの巻き戻しで観ているような感じ。まさに逆再生!
タネが明かされて明かされて…最後はこのストーリーの「出発点」に行き着くのです。

 

このお話は、観る人によって感じるものが全然違うと思うし、何度か観るとまた違う解釈が生まれてきそうな気がする作品だと思いました。
人生は選択の連続で、その選択が失敗だったかもしれないし、正解だったかもしれないけれど、でもとにかく、自分が選んだその選択を思い返すことはできても、決してその時点に戻れることはないんだよな…っていう、その事実だけは「切ない思い」として、観た人に共通して印象に残ったのではないかな〜と思いました。

このミュージカル、キャストの熱量が凄すぎました!
出演されているメインキャストの6人をはじめとして、この作品ではアンサンブル的な役割をされているキャストの方々も、ほとんどがミュージカル界で大活躍されている方々ばかり(…なんて贅沢なんでしょう…!)なので、クオリティが本当にすごく高い!!
そんな方々が、全身全霊で役に全熱量を投入して臨んでいらっしゃるので、それを受け取るわれわれ観客もしっかりしていないと吹き飛ばされそうな勢い。
マチソワ公演の日も結構あるけど、みなさん本当に大丈夫?って思ってしまうほどのエネルギー量だと思いました。本当に素晴らしかった!!

難曲と言われるソンドハイムさんの楽曲は、とてもキャッチーで、後々までずっと耳に残ります。音程を取るのも、リズムを取るのも本当に難しそう!でも、キャストのみなさんの歌唱力が素晴らしすぎて、あまり難曲に聴こえなかったのも、すごいな〜って思いました。ほんとにキャストのレベルが高いんです!

 

そして何しろ、逆再生で時を遡っていく演技!これがもうほんっとうに素晴らしい!
オールドフレンドの3人(フランク・チャーリー・メアリー)の40歳から20歳までの人生を遡っていくストーリーなのですが、シーンが進むにつれ、みんな確実に若返ってるんですよね。みんながみんな、その技術が凄いので、各シーンに説得力がすごくありました。

最後のシーン(20年前のシーン)は、フランクだけは40歳のままのように見えたので、あれ?と思ったりしたのですが、このストーリーは、フランクの回想で進んでいくので、最初と最後のシーンが繋がっているから、その見え方は正しかったんだということがわかりました。(後日ツイッターのメリリー質問箱に質問したら、答えてくださいました(^^)v)

この作品、演じる側はもちろんすごく大変だと思うけれど、実は観る側も結構大変😳
舞台上にいろんな人間模様が同時に展開してるので、キョロキョロ見ちゃって目が足りない💦誰を見たらいいんだーーー💦って思うこともしばしば(笑)
きっと見逃してることも多いから、それだけでも何度も観たくなっちゃいますね〜!

そして、シーンごとの頭の切り替えが必要で、それが結構大変な作業でした。
観劇する際は、体調万全で頭もスッキリした状態で臨むことをお勧めします!

 

この作品、感想を書くのが難しいです。
多分、観るたびに感じること変わると思うし(現に、これを書いてる時点で4回観劇しましたが、毎回本当に感じること気づくことが違います!)、誰に注目して観るかによって、そして観る人の辿ってきた人生によってもきっと全然違うはず!

なので、乱文になりがちなのですが、メインキャストの感想、いきたいと思います!

 

平方元基 (フランク)
とにかくスタイルが超絶良くてカッコいい!脚長っ!富と名声だけを追い求めて、大切な友達を蔑ろにしてきたダメ男フランクを、とても素敵に繊細に演じてました。歌声も素晴らしくて耳福♡

 

ウエンツ瑛士 (チャーリー)
友達思い、奥さん思いの心優しい男性をホントに素敵に表現されてました!ウエンツくんのお芝居や歌をちゃんと観たのは初めてでしたが、完璧に安定したブレないお芝居で、すごいなぁ〜と思って観てました。見た目も、完全にチャーリーそのものでした!

 

笹本玲奈 (メアリー)
このために増量しての役作りが、まず本当にすごいと思いました!体重80キロ(実際はそんなにないけど)で、酒と煙草と食べ物に溺れがちな女性ってことが完全に伝わってきました!役作りの説得力が凄まじかった。20歳のシーンはもう本当に純粋で可愛くて、そこの対比もお見事でした!そして、玲奈ちゃんの歌唱力の凄さが、この作品全体を支えている気がしました。

 

昆夏美 (ベス)
まず驚いたのが、登場した時の感情爆発のシーン!オールドフレンド3人以外の他のメインキャスト3人は、各シーンにポイントで入ってくる感じの登場の仕方なのですが、昆ちゃんは、スッと入ってきて、いきなりの感情爆発が、びっくりするほど強烈でホント素晴らしかった!!フランクと結婚する頃の若いベスがとても可愛くて、いじらしかったな〜♡だからこそ、ものすごく切なく感じちゃいました…

 

今井清隆 (ジョー)
このジョーの段階的な変化がもの凄かった!最初の登場では、元妻に金の無心をするボロボロの落ちぶれた姿。それが、シーンごとに若返っていくにつれ、どんどん素敵な男性になっていくんです!包容力があり、妻の浮気にも気づかないふりをして大きな心で許すところなんかもう、良い人過ぎて…!きーよさんの安定の素晴らしい歌唱力で、舞台に登場すると、とても安心感がありました。

 

朝夏まなと (ガッシー)
素敵すぎる悪女!!強烈!!色気がすごい!!
いったい何人のオトコを虜にしてきたの!?っていう魅力満載の大女優❤
フランクを堕とすためには手段を選ばず周りの人を引っ掻き回してしまう女性。でも、ある時大女優になるために、すべてを捨てて生まれ変わるという決断をした、っていう努力の人でもありました。実は本当は、フランクの音楽の才能に心底惚れた、純粋な人なんじゃないのかなぁ〜っていうのが、現時点での個人的な見解です(笑)まぁさまガッシーの2幕冒頭のショーシーンは本当に華やかで素敵で、かなりの見どころポイントですっ!

 

ホリプロステージ貸切公演の時のアフタートークショーで、笹本玲奈さんが言っていたのですが「この作品はできれば2回は観てほしい」と。「絶対に1回目に観た時と感じることが違うから」と。

それは私もその通りだな!と思います。

そしてもう1つ、私がおすすめするポイントとしては、パンフレットをしっかり読むこと!

1950年代〜1970年代のアメリカ、という時代設定なので「その時代のこと、よくわからないよー!」と感じてしまうことも多いかと思います。パンフレットには、劇中のシーンの時期に「この頃には何が起こったのか」という時代背景を細かく解説してくれているので、観劇前(観劇後でも良いかも!)に読んでおくと、ストーリーが、ものすごくわかりやすくなります。

ただでさえ逆再生の形式にアタマを使うミュージカルなので、時代背景をある程度わかっておくことは、物語にすっと入っていけるコツなんじゃないかな、と思います。

 

そんなこんなで、私はすっかり作品の魅力に取り憑かれ、超個人的には朝夏ガッシー様の魅力(魔力)に取り憑かれてしまって、チケットのおかわりが止まらない!っていう状態(笑)なのですが、どうか最後の大千穐楽まで、無事に完走できますように!と心から願っています🙏

 

■キャスト

平方元基

ウエンツ瑛士

笹本玲奈

昆夏美

今井清隆

朝夏まなと

岸祐二

上口耕平

渚あき

中別府葵

宮原浩暢

中井智彦

井阪郁巳

家塚敦子

三木麻衣子

森加織

雅原慶

高木裕和

前田武蔵/荒井天吾

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ミュージカル「メリリー・ウィー・ロール・アロング」

2021年5月17日ー5月31日 @新国立劇場 中劇場

2021年6月4日ー6月5日   @愛知芸術劇場 大ホール

2021年6月11日ー6月12日(うち、6月12日は公演中止)

 @梅田芸術劇場 メインホール

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